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日々の雑感と勉強の記録

令和2年予備試験論文式試験 民事訴訟法 答案構成

答案構成のはずが半再現答案みたいになってしまった。中途半端だけど眠いので仕方ない。

答案分量は3頁と少し。時間は55分(検討5分+解答50分)。

 

問1
1 裁判所が下すべき判決
(1) 確認の利益
本訴は確認の利益を欠き、裁判所は却下判決をすべきでないか。

債務不存在確認の訴えの本訴に対して同一訴訟物についての反訴が提起された場合の本訴の確認の利益について判断した百選29事件を想起
判例は、執行力が付される給付請求の反訴が提起された場合本訴は方法選択の適否を欠き、原則却下とする。
この判断は紛争解決の観点から妥当であり、支持できる。
もっとも、本件では反訴が一部請求であり、裁判所が反訴全部棄却の心証を抱いている点で判例と事案を異にし、直ちに射程は及ばない。
この点、反訴のみ維持しても紛争の一部しか解決することができず、人的損害全体の有無について判断すれば紛争が解決することに照らせば、本訴については未だ方法選択の適切性がある。また、裁判所が人的損害はまったく存在しないという心証を抱いており、紛争解決の成熟性・即時確定の利益もあると言える。
したがって、本訴については確認の利益を欠かない。

(2) 訴訟物の特定
全部認容判決をすると、246条133条2項2号違反にならないか。債務不存在確認の訴えの訴訟物をいかに考えるか。
 判例は、債務不存在確認の訴えの訴訟物は請求の趣旨・請求原因・その他一見記録から、上限額が特定されている必要があるとする。もっとも、同判例は、上限額が特定できない場合にまで直ちに特定を欠き却下すべきとの趣旨まで含んでいない。全部認容の場合には、損害が一切存在しない点を確定できる点で、紛争解決上問題はない。
 本件ではYは症状があり治療が続いている旨述べ、Xからすれば直ちに上限額を特定することは困難であった。さらに裁判所は全部認容の心証を抱いている。
したがって、246条、133条違反とはならない。

(3) よって、裁判所は却下判決をすべきではなく全部認容、すなわち本件事故により生じた人的損害について、不法行為に基づく損害賠償請求権は存在しないことを確認する旨判決を下すべきである。


2 既判力の客観的範囲
百選76想起
既判力(114条1項)は、審理の弾力化・簡易化の観点から、「主文に包含する」訴訟物の存否につき生じる。
判例によれば、債務不存在確認訴訟の訴訟物は自認額を除いた部分である。
したがって、本件では人的損害についての損害賠償請求権が存在しないとの判断について既判力が生じる。

問2
 百選80想起
1 判例は一部請求棄却後の残部請求について、すでに解決した紛争の蒸し返しであるとして、特段の事情がない限り信義則に反し許されないとする。これは、前訴訴訟物は当該一部であるが、その存否の判断にあたっては自ずから債権全体について審理することとなり、前訴全部棄却の判断は残部が一切存在しないということを意味するからである。
 本件で特段の事情があるか。後遺症は前訴判決後に判明しており、蒸し返しにならない云々で特段の事情あり。

2 もっとも、前訴における反訴は人的損害の一部請求であり、財産的損害については、請求していない。かかる部分についてはどのように考えるか。
百選82想起 
判例は同様の事案で明示的一部請求の構成をしている。批判もあるが紛争解決を志向したものであり、支持したい。
本件は物的損害について前訴で請求しているわけではないが、合意によりすでに全体が解決しており、蒸し返しにならないかということが問題となる点で共通し、射程が及ぶため、同様に検討する。
この点、前訴判決後に後遺症が判明しており、蒸し返しとはならない特段の事情あり。

3 このように構成することで、残部請求の認容を根拠づけることができる。

 

感触:A

民訴は過去の出題傾向を分析したところ、百選掲載判例の類似事案か判例そのままの出題しかなかったため、8月から百選を4周ほど読み込んだ。今年は「判例の立場に言及しつつ」という指示が全設問でついていたため特にこの方針が功を奏したと思う。

正確な言い回しができていない部分もあるが概ね問題ないと思いたい。