EscApiSmEr’s room

日々の雑感と勉強の記録

令和2年予備試験口述式試験 民事科目(1日目) 再現

パネルは2枚で、左手に置かれたパネルにはXの言い分が、右手に置かれたパネルには下のような図と簡単な時系列のまとめが書いてありました。

f:id:EscApiSmEr:20210201141854j:plain

口述民事(1日目) 図

質問

回答

内心

チーン(呼び鈴の鳴る音)

○室○番です。よろしくお願いいたします。

なんだこの微妙な距離感は。聞いてたより遠い斜め前の位置に2人座ってる…

そこにパネルが2枚ありますね。左のXの言い分と書いてある方を読み上げますから、目で追いながら聞いてください。パネルは手で持っていただいても大丈夫です。

なお、本件の事案で本件係争地というものが出てきますが、それはパネルの図の境界線αとβに囲まれたところを指します。

はい。

うわっなんかパネル2枚あるしXの言い分がめちゃめちゃ長い。読み上げられてる間に頑張って先回りして読もう。

 Xは令和2年4月1日、甲土地をAから代金500万円で買いました。この際、Aから境界線はαであると説明を受けました。そして、Aとともに甲土地について実地の計測を行い、法務局で登記事項を確認したところ、境界線をαとして本件係争地を含めればこれと面積が一致することを確認しました。

 あとから分かったのですが、境界線はβであり、甲土地には本件係争地は含まれず、実際には乙土地の一部だったようです。

 しかし、私は長年継続して占有したので、時効を主張できるだろうと思い、令和14年4月1日、本件係争地について取得時効を援用する旨をYに対して伝えました。

 現在、乙土地については、令和13年4月1日Bからの売買を原因とするY名義の所有権移転登記が存在しますが、本件係争地は私が所有しているのでこのような登記を解消したいです。

以上のようなXの言い分を踏まえて、Xの弁護士Pが提起することが考えられる訴訟の訴訟物はなんですか?

はい、所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記まっ…いや、所有権移転登記請求権です。

長くて整理しきれないけど取得時効だな…。時効完成後にYが係争地を含む土地を買ってるから、時効完成後に現れた第三者が対抗関係に立つって話か。

(副査、腕を組んで背もたれに寄りかかり目をつぶったままゆっくりと3回くらい頷く)

はい、そうですね。では請求原因はなんですか?

Xは令和2年4月1日当時本件係争地を占有していた。

Xは令和12年4月1日当時本件係争地を占有していた。

そこで…いや、そこではいらないです。Xは令和14年4月1日、上記取得時効を援用する旨の意思表示をした。です。

 

(副査、また大げさに頷く)

ええと、令和12年4月1日は…

経過時、でした。

 

 

(副査頷く)

そうですね、経過時。

あと、これで足りますか?Xが主張しているのは何年の取得時効なんでしたっけ。

あ、短期です。なので、無過失の評価根拠事実として、「Aとともに甲土地について計測を行い、法務局で登記事項を確認した」も必要です。

あと、本件土地にY名義の登記が存在する。も必要でした。

 

(副査頷く)

そうですね。それでえっと、取得時効の主張としては、Y名義の登記があることは必要ないんですよね。

はい、取得時効に関しては必要ないです。

 

はいそうですね。無過失の評価根拠事実ですが、Xの言い分を見て他に思いつきますか?

えーと…(3秒くらい読んで)面積が一致していることを確認した、です。

 

(副査頷く)

はいそうです。では、今述べていただいた無過失の評価根拠事実どんな証拠を集めますか。

はい。当時の登記に関する書類。それから実際に計測を行った際には、誰かに測ってもらったと思うので、その証明書みたいなやつを集めます。あとは、当時の土地の写真みたいなものです。

 

(副査頷く)

はい、登記事項証明書などを集める、ということですよね。では、左のXの言い分が書かれている方のパネルを裏返してください。

はい、そうです!

裏返しました。

なんか善意解釈して勝手にまとめてくれるからありがたい。

そこにYの言い分が書かれていますね。今から読み上げますので聞いてください。

はい。

 

私はBから令和13年4月1日に乙土地を代金500万円で購入し、同日登記も具備しました。境界線はβなので本件係争地は乙土地の一部であり、したがって私が所有するものです。

以上のYの言い分を前提として、Yが主張することが考えられる抗弁はなんですか。

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁です。

 

(副査頷く)

はい。ではYはいかなる事実を主張する必要がありますか。

Yは令和13年4月1に本件係争地を含む乙土地を令和13年4月1日、Bから代金500万円で購入した。

同日、上記売買に基づき、乙土地につき、所有権移転登記を具備した。になります。

 

他に何か主張する必要はありませんか。

え!?えーと…、境界線はβであったことでしょうか。

分からん…主査が相当優しそうだから、何か喋れば誘導してくれるだろう。

(副査、わざとらしく首を傾げる)

えーとね、どうしよっかな、Yは自分が所有権を有するって言いたいわけですよね。そうすると…

あ、Bは売買契約当時乙土地を所有していた。でしょうか。

なるほど。言われてみればって感じだけどこれは特殊パターンだな…

はい。Xは時効取得を主張しているわけですよね。本件係争地の現在の所有には争いがあるわけですが、これらを踏まえて日付はどうなりそうですか。

はい、令和12年4月1日に訂正します。

あっ、B支点の二重譲渡になって、完成時点でB→Xが擬制されるからこの時点で権利自白成立ってことか?まだ飲み込み切れてないけど、むっず!

(副査、頷く)

はい、そうですね。この時点で権利自白が成立しているからということでしょうかね。

はい、そうです。

いちいちまとめてくれて優C

はい、それでは、Yは売買の証拠として何を集めますか?

はい、まず、売買契約書が考えられます。次に、契約締結までのメールのやりとり、それからBの供述の陳述書を作成することが考えられます。また、500万円という高額であれば銀行から引き出したか振り込んで支払ったと思うので、それ記載された通帳も提出します。

 

(副査頷く)

通帳というのは代金の支払いを確認するためということですよね。

はい。

 

はい、ではまたパネルの下の方を見てください。事案を読み上げますので聞いてください。

はい。

 

あなたはXの代理人Pです。本件訴訟はにつき、PはYの代理人弁護士Qと交渉し、XがYに対し代金200万円を支払う和解を行う方向で話がまとまりかけていました。ところが、Pは、Yとの共通の友人から、200万円というのはQの意向であり、Yは100万円でいいと思っているという話を聞きました。あなたは弁護士Pとして、Yと直接話して和解の額を100万円としてもらうとしたら、この行為に何か問題はありますか。

はい、相手方当事者との直接の交渉を禁止した職務基本規定52条に違反する点で問題があります。

はい直接交渉ね

(副査頷く)

では、直接交渉禁止の規定の趣旨はなんですか。

はい、本来法律問題に関する交渉というのは、法的問題の専門家である弁護士同士が行うことで、公平適正な解決がなされると思います。直接交渉は、そのような適正な解決を阻害してしまう点で問題があります。

うわーそこまで聞いてくるか。だいたいはわかるけど。

うん、相手方弁護士についても何か言えないかな。

はい。相手方弁護士の弁護権が侵害される点で問題があります。

 

うん、もう少し具体的にならないかな。

はい。相手方も20条、21条22条で依頼人の正当な利益を追求することが求められているところ、勝手に交渉を進められてしまうと弁護人としては関与することができなくなってしまいます。そうすると弁護人としての義務ないし権利が侵害されてしまうので、問題があります。

えー…これ以上具体的にってなんだ…

うん、弁護人と依頼人っていうのはどういう関係なんでしたっけ。

委任関係です。

これでもだめか笑

そうですよね。そうすると…(なんか色々説明してくれた上で)。こういうことですかね?

はい、そういうことです!!!

なんか勝手にまとめてくれたし、その通り考えてましたみたいな元気な返事をしておこう。

では、これで終わりたいと思います。

ありがとうございました。

法曹倫理でこんな掘り下げられたの俺だけだろ…でも10分ちょいで終わった気がする。