令和2年予備試験口述式試験 刑事科目(2日目) 再現
【パネル】
0時00分 職務質問を開始
0時30分 尿の任意提出を拒否
3時00分 強制採尿令状の請求の準備(?)
3時30分 令状発付
5時00分 令状執行
※3時30分と5時00分はもしかしたら時刻が少し違ったかもしれません。
質問 |
回答 |
内心 |
チーン(呼び鈴が鳴る音) |
○室○番です。よろしくお願いいたします。 |
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おかけください。 |
失礼いたします |
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手元のパネルを裏返してください。今から事案を読み上げるので、パネルを見ながら聞いてください。 |
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あれ?いきなりパネル? 強制採尿って書いてあるけど刑訴から?公務執行妨害か? |
警察官甲は、ある日の午前0時に巡回をしていたところ、覚醒剤使用者特有の挙動をしているAを見つけ、職務質問を開始した。調べたところ、Aには覚醒剤自己使用罪の前科があるようである。甲はAをしきりに説得して尿の任意提出を求めたがAは応じず、ついに0時30分には絶対に応じない旨の意思を示し、その場から立ち去ろうとした。そこで、甲はAの肩に手をかけて引き止め、警察官3名でAの行く手を塞いでその場に留め置いた。午前3時になって甲は強制採尿令状の請求を行い、午前3時半(?)に同令状は発付され、午前5時に令状を執行した。 以上を前提に質問します。このような強制採尿を行うに際して、甲警察官はいかなる令状の発付を受けますか。 |
条件付き捜索差押え令状です。 |
おおっとこれはまさに昨晩話してたやつだ。条文聞いてくれ〜〜 |
うん、令状じゃなくて許可状ね。 |
はい。 |
許可状って言わないとだめかいな |
どういう条件をつけるの? |
医師をして医学的に適切な方法をもって行う旨の条件を付します。 |
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はい、では本件でAを留め置いた行為は適法か説明してください。 |
はい、適法です。必要性・緊急性等考慮して具体的状況において相当と言える場合、任意処分は適法なものとして許容されます。 本件では、再三の協力要請に対しAが尿の任意提出を拒み、強制採尿をすることが相当と認められる状況でした。そして、強制採尿を行うに当たり令状を発付していたところ、これを執行するために留め置く必要性があったと言えます。そして、警察官が行った行為は肩に手をかけたことに過ぎず、身体の自由に対する制約が多少あるに留まります。よって具体的状況の下相当といえるので適法と考えます。 |
はいはい、あの令状請求準備後は所在確保の必要から、純粋な任意処分による場合よりも長時間留め置けるってやつね。
※後から見返すと、嫌疑や前科、留置の状況に関する事情を丸々落としてしまっています。必要かつ十分な量の回答をしようとしたのですが、結果重要な考慮要素を落としてしまったようにも思います。 |
なるほど。強制処分には該当しないという理解ですか。 |
はい。 |
ああ、そっちから当てはめた方がよかったのか。 |
でもさ、5時間も留め置いてるわけでしょ。これはさーさすがにまずいんじゃない? |
あーそうですね…。たしかに、これだけ長いと問題があると思います。令状発付もAが従わない意思を固めた0時半から2時間半も経過してますし。 |
あー時間よく見てなかった |
そうだね、そうすると? |
違法だと思います。 |
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じゃあ、仮に、0時20分(40分?)に令状請求の準備にとりかかって、その旨を被疑者にも告げているとしてみて考えてください。この場合、その後の時間経過はやむを得ないものだったとします。どうなるでしょう。 |
適法です。 |
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はい、それはなぜですか? |
先ほども述べた通り、令状の請求準備段階から、令状執行のため被疑者を留め置く必要性が新たに認められます。そして、その場合、判例によれば通常の任意処分より長時間留め置いても適法となるとされているところ、私見も同じ立場をとります。そして、この立場を前提とすると、令状発付にすぐに取り掛かっており、任意処分として許される範囲内ということになると思います。 |
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なるほど。そうすると、結局警察官がどういう対応をしたかで、違法適法が変わっちゃうわけですけど、これって不当じゃないですか? |
(なんかごちゃごちゃ答える) |
現場思考問題か。 |
うーん、それだとこの批判に対する反論にはならないと思うんだけど |
警察官の適切な対応にある程度期待せざるを得ない面はあるかなと思います、また、違法が重大な場合には証拠排除で対応すべきだと思います。 |
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(証拠排除で頷いたように見えた)。警察官にもある程度客観的に正しい対応を取ることが期待できるだろうということですかね。あとは、おっしゃりたいのは裁判官が令状発付をチェックしてるから問題ないっていうことですかね? |
はい、そうです! |
誘導強引すぎる...笑 |
では、任意提出を求めてから(強制採尿を行ってから?)Aが逃亡して、逮捕状も発付されていたところ、2週間後に警察官がたまたまAを見かけました。この際、警察官は逮捕状を持っていなかったとして、Aを逮捕をすることはできますか。 |
できます。 |
逮捕状の緊急執行だな。これもきちんと押さえてたから条文聞いてくれ〜〜 |
それはどのような理由でですか。 |
逮捕状の緊急執行です。 |
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要件はわかりますか |
被疑事実の要旨の告知、逮捕状が発付されている旨の告知、緊急性です。 |
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はい。緊急性というのは「急速を要する」ということですかね。 |
はい。 |
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では、警察官が逮捕状の緊急執行にあたり、被疑事実の要旨の告知を忘れてしまいました。この場合、逮捕は常に違法ですか。 |
違法とならない場合もあります。 |
また現場思考っぽいな…全然わからないから一般論を示して誘導してもらおう。 |
どのような場合ですか。 |
はい、手続の瑕疵が軽微な場合です。 |
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それって違法は違法ってことにはならないんですか? |
そうですね。他の手続上の瑕疵との総合判断になると思います。ですから、この瑕疵のみをもって、類型的には違法とはならないと考えます。 |
わからないのででっち上げよう。 |
でもさ、被疑者としてはたまったもんじゃないよね。何の罪で逮捕されるのかもわからないわけでしょ?それでも適法でいいの? |
はい…たしかに、被疑者にとっては、弁解しようもないわけですし、防御権に対するというか、不利益は大きいということになります。 |
適当に突っ張ったしここら辺で引いとくか... |
そうだよね。じゃあ、どういう場合に違法にならないと思う? |
はい、後から被疑事実の要旨の告知を行ったような場合です。 |
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他には? |
えーと、そうですね… あっ、事前に自分がどのような被疑事実で逮捕されるか分かっているような場合でしょうか! |
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(うなずいて)そうだね。そうすると本問はどうかな。 |
えっと、確認させていただきたいんですが、Aは事前に任意提出を求められていたんでしたっけ? |
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そうです。 |
そうすると、Aとしては覚醒剤自己使用の被疑で逮捕されることを知っていたといえるので、違法とならないと考えます。 |
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はい、では事案が変わりますので聞いてくださいね。 今の逮捕状の緊急執行がAになされたとします。このとき、Aが警察官を突き飛ばしたとします。Aには何か犯罪が成立しますか。 |
はい。公務執行妨害罪が成立します。 |
やっぱり公務執行妨害か。 |
では、Aが、警察官の逮捕は違法だと思っていたらどうですか。この場合にも職務妨害罪(ママ)は成立しますか。 |
はい。成立します。 |
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あなたそのように考えた思考過程を説明してください。 |
はい。公務の適法性は、客観的に、行為時を基準として判断します。本件では、客観的には逮捕状の緊急執行の要件を満たしていますし、行為時において適法であるといえます。したがって同罪は成立すると考えます。 |
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はい。A視点で見ると何があるということですか。 |
ん?えーと、あっ、錯誤です。 |
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はい。そうですね。この場合は法律の錯誤があるにすぎないから故意に問題はないということでしょうか。事実の錯誤の場合と区別するということですね(あとなんか言ってた。) |
はい、そうです! |
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では、実際には、要旨の告知がなされていたんですが、Aがそれを聞き逃していた場合にはどうなりますか。 |
その場合も成立します。事実の錯誤があるにすぎないとも思えるんですが、Aとしては聞き逃したのだったらこの後要旨の告知がされると想定していると考えられるので、そのような認識をもっている以上、逮捕が適法に行われていないという認識に錯誤があるにすぎないといえ、法律の錯誤にすぎないため、成立すると考えます。 |
事実の錯誤の話を聞きたがっているのはわかっているんだけど、口が勝手にいらんことまで喋ってしまった…。 |
???(斜め上を見上げて一瞬考え込む) |
…… |
やっちまったー |
えっと、もう一回説明してもらえますか。 |
(同じことをいう) |
答えはわかってるから次で答え直すか。 |
でも、逮捕はされちゃってるわけですよ? |
あ、なるほど。そうすると、事実の錯誤になるので、成立しません。 |
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はい、そうするとAの態様によって犯罪の成否が変わっちゃうわけですが、これは不当じゃないですか? |
不当ではないと思います。 |
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それはなぜですか? |
はい、犯罪の成否というのは被疑者にとって非常に重要な事柄であり、行為無価値的な不法を書く場合、すなわち主観的には自分の行為が適法であると認識している場合にまで犯罪を成立させるのは問題があり、このような場合に犯罪の成立が否定されるのはやむを得ないというべきだからです。 |
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つまり、責任主義の観点からは不当でないということですか。 |
はい。 |
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はい、では以上で終わります。 |
ありがとうございました。 |
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